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精神鑑定と精神科医冥利

doctor

裁判官と直接会って話した人は、何らかの事情(法務関係の職種、裁判の原告・被告、犯罪者、証人など)のある人しか普通はいないであろう。

テレビで法廷の上に座り厳かな判決を下す裁判官は、まさに雲の上のさらに上にいるような人である。

しかし、そんな裁判官がわざわざ時間をかけて病院まで会いに来てくれるのである。

精神鑑定を行う前に、裁判官の前で、誠実に鑑定を行うという宣誓をする必要がある。

普通は鑑定人が裁判所に呼び出されて、そこで宣誓を行うことが多いが、どうしても都合がつかないときなど、裁判官、書記官、さらに検察官、弁護士まで揃って病院に会いに来てくれ、病院の一室を使って宣誓式を行ったりするのである。

裁判所から選定された鑑定人(精神科医)は、まず関係者でないと見ることのできない数百ページに及ぶ一連の捜査資料を裁判所から手渡される。

そこには事件の一部始終が記載されている。犯行の経緯、被害者の写真、司法解剖の様子、被疑者の供述などである。

これをジャーナリストに漏洩した精神科医が逮捕されたのは記憶に新しい。

その後、被疑者と面接するために拘置所にイ可度も出向いたり、逆に刑務官に頼んで被疑者を病院まで連れてきてもらい心理検査を行ったり、脳波・脳CTをとったりする。

その後、おおよそ2~3ヶ月かけて鑑定書を作成する。

鑑定書は通常50~200ぺージ近くに及ぶ。鑑定書の最後には鑑定主文と称して、犯行当時の被疑者の精神状態に責任能力が問えるかどうかを記すのである。

例えば、犯行時、被疑者は精神障害のため心神喪失状態であったなら責任能力は問うことが難しく、犯行に対しては起訴されない(無罪になる)可能性があるのである。

場合によっては、鑑定書の内容に関して裁判の席で証人として喚問されたりもする。

自分の鑑定した結果が裁判の行方を決める大きな証拠になるため、実にシビアな仕事である。

鑑定人の選定は検察や裁判所から直接鑑定依頼がきて、鑑定内容や条件が合えば合意の上で引き受けることとなる。

精神科医なら希望すれば誰でもできるというわけではなく、これまでの鑑定経験や、鑑定の分野(例えば、覚せい剤依存など)や司法精神医学にもある程度精通していることが望ましいとされる。

しかし鑑定業務は原則通常勤務の合間に行うため大変な労力がかかり、また公判で証人喚問され弁護士、検察官から鑑定内容について追及されることもあり、概して鑑定人のなり手が不足している。

しかし、そんな中テレビニュースなどで自分が作成した鑑定書通りの裁判結果が出たときなどは、精神鑑定をやりとげた達成感は格別であり、精神科医としての冥利に尽きるのである。               

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