医師になるために

現役医師が紹介します。 ishps.org

得竟先、元請け、下請けなんてない

doctor

医師は頭を下げる相手が基本的にいない。これは医師という仕事の大きな特徴である。

医師の相手は患者さんである一般大衆である。

当たり前であるが、実はこれが医師が頭を下げる必要のない大きな理由の一つである。

他職種と比較してみると、一般消費者をターゲットとしている企業では一般消費者がお客様であるので、要はその一般消費者に頭を下げさえすればいい。

例えばホテル、大手スーパーなどは、お客様には頭は上からないが、一方で商品を納入させている仕入れ業者には、少しでもコストを下げるようとても強い態度に出たりする。

“お前のところの商品を置かせてやる”、“使ってやる”という感じである。

私がかつて勤めていた建設関係の会社では、国や地方公共団体から公共事業を請け負っていた。このため役人には絶対に頭が上がらなかったし、どんなに無茶を言われてもひたすら耐えるしかなかった。

しかし下請けに対しては仕事を出す方であり、立場が逆であった。

このように仕事には職種間で上下関係を伴う。中には仕事の上下関係を身分の上下関係と勘違いしている相手先もいて苦労させられた。

会社員であれば誰しも同様の経験があるであろう。役人も出入り業者には横柄な態度に出ることもあるが、一般市民の苦情処理に頭を下げることも多い。

しかし医師の場合、唯一の得意先である患者さんに対して頭を下げ“診させて頂きます”といったとことは、よっぽど経営に困っている病院以外は滅多にないであろう。

医師不足が取り沙汰され数時間待っても数分しか診てもらえない現状では、“診てやっている”といった感が断然強い。逆に、患者さんの方から丁寧に何度も頭を下げられ感謝される方が多い。

つまり資本主義の構造上唯一頭を下げるべき患者さんから逆に頭を下げられるという状況であるため、医師は頭を下げる相手がいないと言える。

それどころか患者さんから余計なことを言われたりすると、すぐにカッとなる医師も度々いる。

患者さん側からすれば“なぜそんなことで怒るのだろう”という疑問も沸くのであるが、頭を下げる習慣のない職種だとその理由も分かるような気もする。

一方で、医師に頭を下げてくれる人たちはいくらでもいる。その代表格は製薬会社のMR(営業)さんたちである。とにかく自社の薬を使ってもらうために医師にお願いしなければならない。

公立病院では直接的な接待は受けられないが、それでも夕方になると廊下に黒い小奇麗なスーツをまとった端正な身のこなしのMRさんたちがズラリと並び、一斉に頭を下げてくれたりする。

本当に恐縮で、その中を歩くのは小恥ずかしい。

医学生や研修医はまだ学ばせてもらっているという謙虚さが残っているため、患者さんにも丁寧に接するしMRさんにも横柄な態度に出ることはないであろうが、いつまで続くかである。

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